偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「俺にとっては、最大の長所なんだけどな。どんな美人だっていずれは衰えていくんだし、
容姿にばかり金と時間を費やす女とは結婚なんかしたくないよ」
光一さんは淡々と持論を語る。言っていることはわからなくもない。正論なのかもしれない。
けど……。
「そういうことじゃな~い!!言い方ってもんがあるでしょ?地味って言われて喜ぶ
女がいると思う? 愛らしいとか癒されるとか、もうちょっとオブラートに包んでさぁ」
「だ・か・ら、付き合ってるときはそういう言い方してただろ? 華といると落ち着くなとか、いかにも女が喜ぶようにリップサービスしてた。本音を言えっていったのはそっちだろ?」
「うっ……」

そういえば、付き合っているときの光一さんはそんなようなことをよく言ってくれた。私は
その都度、天にも昇れるくらいの幸福感を味わった。
そうか……あれらの誉め言葉は『地味でコスパのいい女』を最大限オブラートに
包んでいただけだったのか。
自分で言い出したこととはいえ、過去の美しい思い出にまでケチをつけられた気分だ。


「大体、華のほうだって大概じゃないか。顔がいい、学歴がいい、背が高い。
外面がいいって……これはどう解釈しても悪口だろ」
「え? だって、光一さんの長所って表面的なとこしかないっていうか……内面は最低に
近いっていうか……」
「お前のほうが少し、オブラートに包めよ」
「いや、包んでも隠し切れないドロドロが……」

私たちは顔を見合わせて、おおきなため息をついた。
「これ、意味あったか?」
「う~ん、お互いにあまり愛がないことを再認識?」
「そこは再認識しなくても、わかってただろ」
光一さんにそう吐き捨てられ、私は返す言葉もなかった。




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