シンデレラLOVERS

「ホント……立派な彼氏だな。おまえって」


紘也の呆れ果てた溜め息混じりの嫌味は右から左にスルーする。


何回も言うけど、俺たちの関係はどうせ一ヶ月限定だ。


俺としては、さっさと過ぎてさえくれたらそれでいい。
絋也との賭けの為のもの。
それ以上の感情なんてそこにはない。


ただそれだけの薄っぺらで仮初めの関係だ。




弁当の疑問をほったらかしにしたまま放課後になった。


珍しく今日は俺の方が先に待ち合わせ場所に着いたらしく、そこに日菜琉の姿はなかった。


そのまま携帯をいじりながら日菜琉が来るのをまっていたけど、いつもの時間になっても待ち合わせ場所に現れる気配がない。


いつもはだいたい日菜琉の方が先に待ってて、ゆっくり歩いてくる俺にヘラヘラと笑いかけてくるのに……。


つーか……俺を待たせるとか有り得ないだろ。


このまま何も言わないで帰ってもいいけど、一言文句を言ってやらないと気が済まない。


それに弁当箱だってあるし。



日菜琉のせいで本日二度目の苛立ちを感じながら、携帯の着歴から裏門の前でかけた以来の日菜琉の番号を呼び出した。


「……有宮くん?」


……じゃねぇよ、俺のこと待たしといて。


当の日菜琉は間の抜けた声で、俺の名前を不思議そうに呼んでいる。


「今どこ?」


間の抜けた日菜琉の声に一層苛立ちが増して、ぶっきらぼうに問いかけた俺に何故か一瞬の沈黙。


そして、


「家、だけど……」


「家っ? なんで?」


躊躇いがちにポツリと答えた日菜琉に、今度は俺が間の抜けた声をあげてしまう番だった。



今日はどのクラスも六限目まであったはずだ。


なのになんで日菜琉は家に居るのか……。



「朝から熱があったから、今日は休んだんだけど……」



俺の疑問は日菜琉からの意外な答えで解消される……ワケがない。


日菜琉が休みだったなんて初耳だった。


だって友達が弁当持ってきたじゃん。


「弁当は?」


「えっ? 芹華……友達が持って行かなかった?」


「来たけど……」


「朝に頼んだんだ。……良かった」


俺の答えを聞いてほっとしたように呟いた日菜琉に、胸の中に言い知れぬモヤモヤが広がってく。


自分は熱で休んでるくせにこいつは弁当は律儀に届けて来た。


……なんなんだ?


尽くす彼女のつもりか?


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