シンデレラLOVERS

……誰かが髪に触れた。


そんな感覚で俺の意識は、微睡みの中から目を覚ました。


……紘也が起こしに来たのだろうか。


気がつくと、運動場からはガヤガヤと騒がしい声が聞こえている。


どうやら部活が始まる時間になったらしい。


「熱い……」


熱で口の中はカラカラに渇いてた。

多分、様子を見に来てくれたであろう紘也に水を貰おうと、俺はゆっくりと目を開いた。


「あっ……大丈夫?」


「っ!?」


目を開いた先に現れた人物に思わず、俺は自分の目を疑った。


熱が見せた幻覚なのか……。


じゃなければなんで、ここに日菜琉がいるんだ? 


日菜琉の存在に気付いて慌てて体をベッドから起こした俺に、


「起きて平気なの?」


俺の額を冷やしていた濡れタオルを手にした日菜琉が、心配そうに声をかけてきた。


「なんでここにいるんだよ」


「えっ? あ……城崎くんから聞いたの。気になったから様子見に来たんだけど……ごめんね」


俺の質問に慌てて答えた日菜琉は、何故か申し訳なさそうに瞳を伏せた。


紘也の奴、どういうつもりなんだ。


紘也の意図がわからずに黙り込んだ俺に、


「城崎くんが起きたら呼んでって……。わたし呼んでくる」


「っ!」


こう言って傍らの椅子から立ち上がった日菜琉を、とっさに腕を掴んで引き留めていた。


「どうしたのっ? 苦しい?」


いきなり腕を掴んで引き留められた日菜琉は、咄嗟に心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。


< 80 / 115 >

この作品をシェア

pagetop