ブック・ワーム
はじまりの本

図書室

図書室はごった返していた。

それは当然、今が読書の時間だからだ。

うちのクラスだけでいっぱいになる図書室ってどんなんだよ?

俺はそう思いながら、中に入っていた。


みんなもう、おのおのの読みたい本を座って読んでいる。

ていうか、本当に読んでなんかいるんだろうか?

きっと読みたい本を手にとって読んでいる奴なんか、実際いないんじゃないか?

俺もそのうちの一人だ。本なんて読みたくない。

読んだってすぐ眠くなるだけだし、つまらない授業を受けているほうが、よっぽど時間は早く過ぎる。

「はぁ〜あ。」

「なにつまんなそうなため息ついてんだよ、時田。」

俺がため息をついているのを見つけ、声をかけてきたのは橋本だった。

こいつは野球部でピッチャーをやっている。

打撃のほうもそこそこ強い。

さく越えなんかも、もう何発も決めている。

ただ、コイツは真面目に野球をやっていない。

どっか適当にやっているっていうか、遊んでいるっていうか。

だからきっと、本気でやったらとんでもない化け物になると思うんだ。

でもコイツは自由に生きている。

野球部にいるのも、数多くの先輩たちが、あの手この手を使って、勧誘したからだ。

そして、うちのクラスの学級委員もやっている。

これも自分から立候補したわけではなく、女子の圧倒的な他薦と投票によって決まったようなもんだ。

身勝手なのに、断れないのかよコイツ…。
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