好きの海に溺れそう
杏光に連絡を入れてから、杏光の家に行った。



いつもはインターホンしないことが多いけど、今日はしとこう…。



ピンポーンと音がなってしばらく、杏光が出てきた。



「海琉おかえり!」



満面の笑顔で俺を見た杏光は、それから背後にいる新太を見て笑顔で「こんにちはー」と挨拶した。



「新太くん…だっけ?」

「はい、水江です!急にお邪魔してすみません」

「いいえ~。入って!」



いつもは家にいるとすっぴんの杏光は、今日はちょっとだけメイクしてる。



部屋着も少しきれいめのやつで…。



普段通りの杏光も見せたくないけど、新太が来るからわざわざ少し綺麗にしたのもなんか嫌!



「お弁当どうだった?」

「おいしかったよ~。りんご、ちょっとしょっぱくて好きだった」

「海琉しょっぱいりんご好きだから入れたんだよ」



お弁当箱を軽くすすいでからつけ置きにしておいた。



それから、冷蔵庫からお茶を出す。



「新太なんか飲む?」

「なんか…自分ちみたいだな」



まあ昔から行き来してて自分の家みたいなもんだよね。



新太の分もお茶を入れて、リビングのソファに座らせた。



お茶入れてあげてるけど、俺は不機嫌だよ…。



「新太くんは今日何で来てくれたの?」

「杏光先輩に会いに来たんす~」



軽口の新太を黙ってはたく俺…。



杏光はニコニコと見てる。



「でもあたしは海琉しか眼中にないからごめんね~」

「お前…ほんとうらやましいわ…」



…。



「あ、そういえば新太くん、沖縄のお土産あるけど食べる?」

「いいんすか?ありがとうございます!」



杏光が立ち上がって自分の部屋からお菓子の箱を持ってきた。



多分家で食べるために買ったんだと思う。



紅芋タルトの個包装を開けるのに苦戦してる杏光に、近くにあったハサミを渡す。



「学校の海琉ってどんな感じ?あたしクラスにいる海琉とかほとんど知らないからさ」
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