好きの海に溺れそう
「うちの彼氏にちょっかい出さないでもらえます?」

「杏光?」

「あ、彼女…さん?」



彼女だっつーの!



急いで来たから足が滑る…。



「うわっ!」



そのまま転びそうになって思わず海琉にしがみつく。



危なっ!



そう思ったら、とっさに海琉があたしをぎゅっと抱き留めて、背後の手すりにつかまった。



「もー…杏光、ちゃんとボードから右足外さなゃ」



あ、そっか…。



海琉があたしをきちんと立たせてから、しゃがんであたしの右足の固定を外してくれる。



「彼氏くん超かっこいい…。良ければ彼女さんも一緒に教えてくれたり…」



お姉さんが海琉にまだ何か言ってる…。



ふざけんな…。



あたしが文句を言おうと思ったら、海琉が先に口を開いた。



「彼女で手一杯なので、他の方にお願いしてください」



そのときちょうどタイミングよくリフトが回ってきたので海琉と2人で乗った。



ガコンと揺れたリフトに思わず隣の海琉にしがみつく。



正常にリフトが上へ上へと上り始めたけど、そのままあたしは海琉にしがみついた姿勢でいた。



「杏光、もう大丈夫…だよ?」

「ナンパされやがって…」



海琉の肩をパンチしてから元の姿勢に戻った。



「ばーかばーか…」

「はいはい。あ、ゴーグルずれてるよ」



海琉はあたしの嫉妬を軽く流してあたしのゴーグルを直した。



余裕ぶっちゃってさ…。



なんか悔しい。



「あ、ほらリフトもう着くよ、用意して」

「え、まって無理怖い何これどうやって降りるのキャー」



さっきもリフト降りたのに、というか毎年降りてるのに慣れないこれ。



ほんっとに怖いから…。



そしていつも助けてくれるのは海琉。
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