好きの海に溺れそう
それまでは玖麗の家で時間を潰そう。



適当にテレビを見たりおしゃべりしたりしてたら、12時。



ランチの時間だ。



玖麗を引っ張って海琉のバイト先まで来た。



玖麗の家から歩いて15分ほどのところにあるそのカフェは、雑誌でも紹介されたことのあるお店。



「おしゃれなお店だね」

「海琉にはもったいないよね」



なんて話しながらお店に入ると、綺麗な女の人が席まで案内してくれた。



窓辺のいい席。



海琉を探すために店内を見回すと、カウンターのところで食器を拭いてた。



白いシャツに腰元のエプロンの制服がよく似合ってる。



「ねえ、かっこいい…」

「ん? 誰が?」



玖麗に言うと、玖麗は店内をきょろきょろと見回した。



「ほら…」



カウンターの方を指さしても、玖麗はわかっていない様子。



まあそりゃそうだよね…。



「玖麗、海琉だよ…」

「ん? 海琉はいるけど…。かっこいい人は?」

「だから海琉だって…」



私の言葉を聞いて玖麗は一瞬固まった。



そしてしばらくしてから「えええええ!?」と叫んだ。



周りのお客さんが見てる。



「玖麗、落ち着いて!」

「ごめん。えっ? 待って? なに? 杏光どうしちゃったの? 彼氏は? え?」

「彼氏とは別れた…」

「別れたからおかしくなっちゃったの?」

「違うって…」



まあ驚かれるのも承知の上…。



だって、そりゃ驚くよね…。



海琉のこと好きになるなんてあり得ないもん。



「海琉のこと…好きになった…」
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