好きの海に溺れそう
杏光は俺のその表情を見抜いて、「そんなにあたしのことが好き?」と言った。



そりゃそうだよ…。



とは言わず、唇を結んで黙って歩いた。



久しぶりにバイトがなくて、杏光と一緒に帰る。



嬉しい…。



2人で杏光の家に行くと、今日は悠麗はいない。



その代わりに玖麗が来た。



玖麗のお父さん・悠胡(ユウゴ)くんの実家から送られてきた物を持ってきたみたいだ。



玖麗は杏光のお父さんの妹・実咲ちゃんの娘だから、杏光とは違う方のおじいちゃんの家だ。



「よかった、いたー」



玖麗は、俺たちを見つけて笑顔になる。



「誰もいなかったらどうしようかと思った。杏香さん仕事だし、悠麗も…」



“悠麗”のところで顔が一気に暗くなった玖麗。



なんで…?



杏光のほうを見たけど、杏光は何か分かってるみたいでスルーしてる。



「来る前にメールすればよかったのに」



杏光が言うと、玖麗は驚いたように「あ、そっか」と言った。



「まあいいや。上がって?」

「でも海琉といたいでしょ?」

「あいにくだけど、玖麗がいてもいなくても好きにさせてもらうので大丈夫」



隣の俺は沈黙…。



杏光は強い…。



「じゃあ上がろうかな…」



三人で家に入って、とりあえず手洗いうがい。



リビングのソファに玖麗と杏光が座ってるのを横目で見つつ、二人のためにお茶を入れてあげた。



ここ俺の家じゃないんだけど…。



ソファまでお茶を持って行くと、沈んだ顔の玖麗が口を開いた。



「悠麗…大丈夫かなあ…」



さっきから、なんで悠麗…?



悠麗、なんかあったの…?



杏光が俺の顔を探るようにちらっと見た。



「悠麗が…今どんな状況になってるか知ってる?」



全然知らない…。



首を振ると、色々と教えてくれた。



大事にしてた彼女と別れたこと、そのせいで今少し荒れてしまっていること…。



そうだったんだ…。
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