きみが嘘をつくから。

隣の席




最近、隣の席の女子が何かと話しかけてくる。



クラス替えの次の日、HRで「まずは隣の席の人と自己紹介して下さい。」と先生に言われ、話したのが最初。


それからちょくちょく話しかけてくる。



言葉を返すのが苦手だから、女子と話すのは乃々香を除いてあまり好きではない。




「河本くん。」

4時間目の体育が終わって今から昼休憩というところで、また隣の席の蛯原さんに話しかけられた。



「…なに。」

別に何もないけどなんか変に緊張する。


一瞬蛯原さんを見たけど目は見れず、逸らした視線を教室の後ろのドアへ向けた。



「体育の選択何にした?」

何でそんなこと聞いてくるんだと思いながらも数十分前の事を思い返した。


選ぶの五つぐらいあった気がする。



「んー、バスケとソフトテニスと、…バレーと…あと何だったかなぁ。」

バスケは部活でしてるから選んだけど、他は適当に選んだからあんま覚えてない。


「器械運動と陸上のは?」

「あー、陸上にしたかな。」

お腹空いたから早く弁当食べたいと思いながらも口には出せず、会話の終わりを待った。



「あんま覚えてないんだね。」

「…どれでもいいから適当に選んだ。」

「適当って。」

クスッて蛯原さんが笑うのが聞こえて蛯原さんを見ると目が合った。


目を逸らすタイミングが分かんなくなり少しそのまま合わせてると、蛯原さんが先に逸らして、思い出したように声を出す。



「そーいや、バスケ部だったね。」

何で知ってんだと思ったけど、自己紹介の時に言った事を直ぐに思い出した。


蛯原さんも言ってたけど何部だったかな。



「うん。…蛯原さんは何部だっけ?」

「バド部だよ。」

確かにバド部っぽい気がする。


雰囲気というかなんか、バド部っぽい。



「そっか。」

言葉を返しながらまた教室の後ろのドアに目をやると、話しながら入ってくる乃々香の姿を見た。



蛯原さんが何も言ってこなかったから会話を終わりにして、近くを通った友達について行くように教室を出た。


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