プレゼント【前編】
はじまりの章
やっぱりね、っていうのが正直な感想。朝、教室に入った瞬間から様子がおかしいなって思った。普段、私が登校してきたって見向きもしないのに今朝に限ってやたらみんながこちらの様子をこそこそ見てたから。

だから、席について机の引き出しの中に手を入れた時、普段そこには無いはずの余計なものの感触にさほど驚きはしなかった。

教室の至るところから遠巻きに今か今かと私が【それ】を手に取るのをじっと待っている。

ーーー面倒くさい

私はその余計なものの存在を全く無視して一時間目の授業の用意をし始めた。

どこからともなく聞こえるひそひそ声。何を話しているのかはっきり聞こえはしないけど大体の察しは付く。ノリが悪いだの無愛想だのと言った否定的な言葉だと思う。

だけど実際、ノリは悪いし愛想の欠片もないのだから言われても仕方ない。寧ろそれらの言葉を並べてみんなが満足するというのならそれでいいと思う。

とにかく私にすればそういった事全てに関して興味もなければ期待もないのだから。

とは言え、これでも中学の辺りまではそれなりに友達もいたしクラスの中で浮くといった事もなかった。

だけど、いつからか友達付き合いとかそう言うのが面倒くさいって思うようになった。

きっかけは曖昧だけど、いや、きっと元から群れるという行為に抵抗があったのは事実。特に女子特有の一緒に何かをする。一緒の物を持ちたがる。一緒の気持ちの共有。そういった事に対しての抵抗が日々積み重なってある時、限界値に達したんだと思う。

それからは自然と友達とも距離を置いた。

だからと言って決して嫌いになった訳じゃない。ただ、休み時間ごとに一緒にトイレへ行くことを拒み、みんなで一緒に買ったキーホルダーを鞄から取り外し、そして一緒に行こうねと約束していたアイドルのコンサートを止めて前から気になっていたアーティストの個展に出向いただけ。

自分の感性に正直に従った結果、あっという間に私は友達からもクラスからもはみ出す存在となってしまった。

私が望んでした事だから気にはしていないけど。

結局、みんなが期待するようなリアクションを起こさなかった私への興味はあっという間に消えていき、みんながみんなそれぞれの事をし始める。

こうして今日も私の存在を消す事からクラスの一日は始まる。何もなかったかのように。何も見なかったかのように。








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