眠り王子が完璧に目覚めたら



まだ部屋の中は段ボールで溢れている。

もしも可能ならば、大阪支社に戻りたい。
あんなに楽しかった職場なのにこんな形で離れるなんて、自分の愚かさになおさら落ち込む一方だった。

でも、だからといって、仕事をおろそかにはできない。
私は荷物の山の中からスーツを取り出し、今、置かれている状況で頑張るしかないと自分に言い聞かせた。


Kaletの東京本社は、表参道にあるスタイリッシュなビルの中に入っていた。
明らかに勢いのある会社という事が一目で分かる。
Kaletというアルファベットが立体的に映像となって飛び出してくる看板は、足を止め見入ってしまうくらいにお洒落で斬新だ。

今日、新しくこの本社に入る人間は、私を含めて三人だった。
私達は大通りがよく見える会議室に通され、そこでしばらく待たされた。
私以外は男性で、二人とも、センスがありお洒落だ。
ここ東京本社は、ビルや仕事内容だけでなく、働く人間もスタイリッシュで洗練されている。



「お待たせしました」


人事部の人が笑顔で会議室に入って来る。


「今回、最初の異動部署に変更がある人がいますので、発表させていただきますね」


変更??
確か、私は企画広報部だったはず。


「え~と、小牧翼さん…
小牧さんは、企画広報部から空間デザイン室へと変わりました。
他の二人の方は、最初の部署で変更はありません」


空間デザイン室?
Kaletでは花形と言われてて、その手のデザイン関係のプロが集まる部署に何で私が??



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