あの日の約束を、君ともう一度




2人の言い合いは、どんどん加速していく。





俺が間に入ろうとしても無駄だった。





それだけ、兄貴は染谷を嫌っていた。





兄貴と言い合いをしている染谷の表情は、少し、ほんの少しだけ、歪んでいるように見えた。





悲しくて、本当は“気づいて欲しい”、そう思っているような。





──────もしかしたら、染谷は、俺にも兄貴にも嘘をついているのかもしれない。




きっと、飽きたなんて嘘だ。





だって、俺にバスケを教えてくれる時の表情は、嬉しそうで、でも悲しそうで。





なによりも苦しそうだった。





染谷は俺たちに『飽きた』と言ったけれど、本当は『できない』のではないか。





兄貴は、全く気づいていない。





染谷が、“バスケ”という言葉の度に悲しそうに顔を歪めるのを。





兄貴は、知らない。





染谷が、左手に青いリストバンドを着けていることを。





俺だって知っている。





水色のリストバンドは男子に配られるものだということくらい。




いつどこで、どうやって染谷が水色のリストバンドを手にしたのかは知らないが、それはまだ染谷がバスケを好きでいることを表している。




俺は、なんの確証もないそんな考えに、変な自信を持っていたんだ。





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