紳士的?その言葉、似合いません!



ちゃんと都築さんに心は傾けているし、信じてもいる。でもわたしはわたしを信じられなくて、都築さんが好きだと言ってくれるわたしも信じられなくて。


こんな捻くれた考えしかできない自分が大嫌いだ。素直になりたいと思うのに態度に出さなくて天邪鬼な自分がいやだ。都築さんを好きになって、ますます嫌だと思った。


今まではそれも自分だからと思ってこのままでいいと思っていたけど、こんなわたしのことを好きだと言葉でも態度でも示してくれる都築さんが妬ましくて、そう思ってしまう自分にまた自己嫌悪してしまう。


普段は気にしていないつもりでもふとした時に思ってしまう。わたしはいろいろ足りなくて、都築さんにはふさわしくなくて。


だから逃げてしまいたかった。そうすればわたしは……


溢れてしまいそうな涙が細い指先で払われる。自然と顔をあげれば都築さんがいつものように美麗な笑みを浮かべてわたしを見ていた。



「そうやって自己嫌悪に陥って苦悩に染まる貴女は美しい」



ふふ、と柔らかく笑ってそっと頰を撫でる。



「意地っ張りで強情で、捻くれた考えしかできないかと思えば素直で。私のことを考えて考えて、いっぱいいっぱいになって。そうやって大人の皮を被って誤魔化して、傷ついたことを必死に隠そうとして泣くことを我慢して…」




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