最後の恋 【番外編: 礼央目線】
「まだ、帰らないよ。全然酔ってないし…。」

「でも…」

「それに、明日は休みなんだしそんなに急ぐ必要ある?それとも、聞かれたくないことを聞かれたから?」


その言葉に反射的に顔を上げた彼女の瞳は揺れていた。


どれくらい、彼女と見つめあっていたのだろう。


「あれから10年も経ったんだし、いいよね…もうそろそろ時効にしても。」


彼女の気持ちがあの時、俺に向いていたかどうかなんてもう関係ない。


俺は…俺の気持ちを素直に伝えればいい。


俺がそう言った瞬間、彼女を纏う張り詰めていた空気がフッと緩んだ気がした。


「……俺は、あの頃好きだったんだよね。だから、松野さんもそうだったらいいなぁって思って聞いてみただけ。願望って言ったのはそういう意味だよ。」


誰にも言えなかった思いを、8年経ってやっと彼女に伝えることができた。


気付くと、隣の彼女はその大きな目から涙を流していた。
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