君があの子に、好きと言えるその日まで。完
体育祭の実行委員は、目の前でラジオ体操をしたり、司会をしたり、得点票を捲ったり、競技種目を決めたりなど、わりと面倒くさい係だと誰もが知っている。

人前に出ることが好きじゃないから、なにがなんでもこの係にだけはなりたくない。

いつもクラスでも目立つような、運動神経のいい男女が一名ずつ選ばれる、そんなイメージが強い。

絶対にやりたくない、誰かがやるだろう。そんな風に人ごとに思っている自分に嫌気がさしていたけれど、私はじっと静かに下を俯いた。

だけど、そんな私のずるい気持ちがばれたのか、なんなのか、ひとりの男子生徒がすっと手を挙げた。


「今年の体育祭のポスター、望月さんが選ばれたみたいだし、記念にどうですかー」

なんて余計なことを言うんだ……。

思ってもいなかった展開に、私は思いきり顔を引きつらせた。

周りの男子も『理由適当すぎだろー』と言いながらも、この流れでさっさと女子メンバーを決めてしまいたいという気持ちを感じた。

ここで断ったら空気が悪くなるのは想像がついたし、皆やりたくない気持ちは同じだ、

かといってなんで私が! とも思ったが、断れない性格なので私は早くも腹をくくり始めていた。

そんな私を見て、前の席の三木ちゃんが『ちょっと、いいの? ほっといたら決まっちゃうよ?』と小声で怒ったように確認してきたが、私は苦笑いだけ返した。

もういいや、引き受けよう。そう思ってすっと手を挙げようとした、その時だった。

「やめろよ、感じ悪ぃーぞ」

星岡君が、空気を割くようにひと言言い放ち、言い出しっぺの男子を軽く睨んだ。

一瞬空気が凍ったが、彼はすぐに手を挙げて、『絵はド下手ですが俺やります』と手を挙げた。

「なんだよ星岡、それ以上モテようとすんなよなー」

「モテたことねぇよやめろ」

「それはお前が来栖先輩……」

そう言いかけた途端、私は気付いたら挙手と同時に立ち上がっていた。

来栖先輩、というワードが出た瞬間、星岡君の表情が暗くなったからだ。

「や、やります、ラジオ体操……下手ですが……」

そう言うと、先生はいつもと同じ抑揚のない声で、『おー、そうか。じゃあ頼んだ、解散』とだけ言って、教室からさっさと出ていった。

望月ちゃんラジオ体操に上手い下手ってあるのー? という声と、緊張して倒れないでねーという声が、パラパラと教室に広がった。
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