君があの子に、好きと言えるその日まで。完
ことを説明すると、星岡君は自分のスマホを充電していたコードを抜いて、私になんの躊躇いもなく渡してくれた。

星岡君のスマホもゼロパーセントだったのに、俺はこのあと部活して帰るだけだからって、そう笑って。

そのまま、嵐のように教室を去っていった星岡君を茫然と見守った直後に、来栖先輩が教室にやってきたのだ。


もし私が、あの時、彼の充電器を借りていなければ。


そう思うと、とんでもなく心臓がバクバクしてきて、心が捻り潰されそうになった。

私が、ふたりの運命を変えてしまったかもしれない。私が、私のせいでーー……。


「……望月さん、どうしたの? 早く行こう?」

そう言って笑いかけてくれる来栖先輩の瞳を、私は見つめ返すことができなかった。

すべてが、どうしようもないことだけど、傷はしっかりと残っている。どうしようもないじゃ、片づけられない傷が。

……何も知らないままこの一年間へらへらしていた自分が、途端に許せなくなった。


……私は、分かってしまったんだ。

あの日、教室で星岡君がひとりで泣いていた原因のひとつを、“私”が作ってしまったこと。

充電器を借りていなければ、星岡君が来栖先輩の妹さんを看取れたかもしれないってこと。


あの涙の理由を、作ったのは私だってこと。



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