君があの子に、好きと言えるその日まで。完





「は、はじめまして、望月依(モチヅキヨリ)です。引っ越しでバタバタしていて、入学式には出られませんでしたが、よろしくお願いします」

皆の視線が集まる中、私はテンプレート通りの自己紹介を済ませ、無理矢理口角をぐっと上げる。

いくら人生で七回目の自己紹介だからと言って、元々人前に出るような性格ではないし、こうして自分の第一印象と立ち向かう瞬間は緊張する。

先生に案内された通り、一之瀬君という少し気だるげな男子の隣に座ると、彼は物珍しそうに私に話しかけた。

「こんな時期に引っ越しなんて、転勤族なの?」

「あ、転勤族です」

「へぇ、大変だねぇ」

「いえいえ、そんな、もう慣れたもんで……」

急に直球な質問を投げられて驚いたけれど、私は彼の感情を読み取れない瞳に気圧されてしまい、なぜか頭を下げていた。

そんな話題に、前に座っていた女子が食いついてくれた。

「そうなんだっ、じゃあ静岡に来るのは初めて?」

好奇心に満ちた大きな瞳を私に向けてくれた彼女は、彼女の質問にこくこくと頷く私を見て、人懐っこく笑った。

「美味しいもの、沢山教えてあげる。あ、私三木麻琴ね、よろしく」

「こいつの味覚センサーは狂ってるから当てにしない方がいいぞ、まじな話」

「一之瀬は黙ってて本当に」

元の中学が同じなのかな……? と思い問いかけると、中学が同じだけでなく家も近いらしい。

この近辺でそこそこの偏差値の高校はここぐらいしかなく、元中が同じ生徒は少なくはないのだとか。

腐れ縁だと言いあう彼女たちの掛け合いに、少しずつ気を張っていた心が優しく解けていくのを感じた。

根拠のない自信が湧いてきて、なんだかやっていけそうだなあ……と、心の中でそっと呟いた。

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