君があの子に、好きと言えるその日まで。完
自分の中で最優先したいことはサッカーだし、雛よりも友達と一緒にいたいし、女子に優しくするなんて、女好きと思われたら周りの男子にどう思われるか。

それに、風の噂で、キャプテンが雛のことを狙っていると聞いた。

ここで俺が雛と仲良くしたらどうなるか……なんて、想像は容易だった。

そんなこと知りもしないで、昔と同じように仲良くしようとしてくる雛に、正直いらだっていた。


そうこうしている間に、夏休みのキツい練習が始まった。

初めてのぶっ通しでの練習と、必要以上に感じるほどの体力トレーニング。


外周ランニング中に足を引っかけられたり、意見しただけで生意気だと蹴っ飛ばされたり、まったく思い当たりのない言いがかりをつけられて教師に呼び出されたり。

先輩からの理不尽ないびりは毎日のように続いた。それでも俺たち一年後輩は耐え続けた。

サッカーが好きだから。仲間が大切だから。


こんな汗臭い日々に、雛が入る余地なんて一ミリたりともなかった。

サッカーが俺のすべてで、仲間と過ごす時間が大切で。


「翔太、おつかれ!」

そんな日々を繰り返し、いつも通り厳しい練習を終え汗だくでロッカーに入ろうとしたある日、雛に話しかけられた。

雛はバドミントン部に所属していて、ロッカー室が隣だったのだ。

翠と同じくらい長い髪の毛をポニーテールにして、黒のユニフォームにショートパンツを履いていた。

最悪なことに、その場には雛のことをよく思っているキャプテンがいて、俺は気まずさで顔を引きつらせた。


「……おつかれ」

「ねぇ、今日おばさん仕事でいないんでしょ? うちでご飯食べる?」


やめてくれ、今そんなことこの場で話さないでくれ。

キャプテンに俺だけ攻撃されるならいいけれど、機嫌の悪くなったあいつは、誰かれ構わず当たり散らす。

大会に向けて、今やっといい空気になってきたところだったのに、こんなことで崩されたくない。


「……いいって、適当に食うから」

俺はそう言ってロッカーに入ろうとしたけど、雛が俺の腕を掴んだ。

「よくないよ、いつもカップラーメンばっかり……」

「構うなよ俺にっ」

俺は雛の手を振り払って、初めて雛に怒鳴ってしまった。

雛は俺の心配をしてくれただけなのに、自分の羞恥心の方が勝ってしまって、雛の気持ちを跳ね返した。
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