君があの子に、好きと言えるその日まで。完

すれ違いばかりの恋だった


引っ越すまでのこの一か月は、本当にあっという間だった。

最後に学校に行ったのが金曜日で本当によかった。

こんなに泣き腫らした目で、誰にも会いたくないから。


「依、どこか行くの? 引っ越し屋さん、今日の夕方には来るから、それまでにちゃんと荷物まとめておいてね」

「うん、分かった。でも大体もうまとめてあるから大丈夫」

「そう、ならいいけど……学校?」

「うん、ちょっと」


言葉を濁して、私はこの日空ける家のドアを押して、外に出た。

空気はすっかり冬の様に冷たくて、コートを着ないと出られないほど寒い。

自分の息が白くなることに気づいて、私は馬鹿みたいに吐息を空気に溶かした。

静岡で暮らした日々を思い出すように遠回りをして駅まで向かう。

ホームまでの階段が長いとか、駅の売店にあるご当地パンとか、バス停の多さに驚いたりとか。

駅までの道のりだけで、色んな思い出がある。
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