無駄な紅葉は散り濡れる.
「余は久信の願いを叶えたい……。

 あやつは娘の幸せを願っておった。

 なぁ、咲子よ。
 そなたは何を望む?


 東宮妃としての権力か?」


余がそう聞くと
目の前の娘は
首を静かに横に振った.


「いいえ、わたくしは
 女の夢を選びます」

余はもう1つの久信の願い…

昔から親しくしていたという
征人との娘の幸せも
達成できる気がした。



「久信、おまえの願いはかなったぞ」

そう呟き、屋根で見えぬ
空を見上げた。


久信が笑っているであろう空を見て。
< 35 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop