全ての記憶を《写真》に込めて
真っ白の空間にいた。
あるのは私と一つの扉だけだった。
扉を引けば、ここから出られるのだろうか。
そう思い扉に手を伸ばす。
「あっ」
ここは、学校……?
茉莉ちゃんが前にいる。
「茉莉ちゃん!」
茉莉ちゃんが振り返る。
「…あの、誰ですか」
「え、」
頭を鈍器で殴られたような感覚がした。
「ま、茉莉ちゃん……?」
「なんで私の名前を知ってるんですか?」
これは、夢……?
「あ、ごめん、なさい………」
人違いでした、と告げ離れる。
早足で、教室に向かう。
もしかしたら、これは全て嘘かもしれない。
早足から段々走る動作に変わっていく。
曲がり角で誰かとぶつかる。
「あ、悪い!大丈夫?」
「しょ、翔くん……」
「あれ?前に会ったことあったっけ?」
全く同じ反応だ。
「ごめんなさい!」
待って、待って、ほかの人は、覚えてない……?
教室へ行ってみる。
扉を開くと、一気に視線が集まる。
だけど、そこには奇妙なものを見るような視線しかなかった。
私が座っていた、優璃ちゃんの隣の席もない。
奥に晴くんの姿が見えたけど、ちゃんと視界に写す勇気がなかった。
気がつけば教室に背を向け、屋上へ向かっていた。