愛されたいのはお互い様で…。

「伊住さん…」

「紫さん、そろそろ、心、落ち着いて来ませんか?…まだだから、まだ来てくれないのですよね。…はぁ、急いてはいけないのでした。…いいんです。
私がこうして代わりに押し掛けていますから、同じは同じなんですけど。…迷惑ですか?」

「迷惑ではないですよ?…迷惑なら…言ってますから」

こうして、隙間が出来た心を埋められてるみたいに、私の中に伊住さんは住み始めている。押されているのは解ってる…でも…嫌ではない。むしろ、こうしていてくれる事で安らぐ、安定している。

「…居ないと駄目みたいです。……あっ」

うっかり心の声が洩れてしまった…。

「紫さん…今のは本当ですか?」

「…だって、伊住さんは…わんちゃんみたいにじゃれて来て、たまに子供になったりもして…甘えたりもするから…。色んな面があるんです。一人で二役も三役もするんですよ?」

「紫さんにはぴったりだと思いませんか?こんな私、放っておけないでしょ?そう思ったら沢山接してくれるでしょ?自然と気にもなる」

「本当、ずるいんですからね…。普段はしっかりした成人の男性なのに。誰もこんな伊住さんの事、知らないんだから…」

…あ。これって、私しか知らない伊住さんて事なのかな。他の人には見せてない部分て事?

「紫さんにしか見せられないじゃないですか…、こんな私…。お客さんはしゅっとした、スマートな私を求めてますからね……ん」

「ぁ……その部分は、分け隔てなく、私も知ってますけど」

「紫さん…そろそろ出ましょうか。…続きはベッドで…したいです」

約束通り、二人でお風呂に入り、狭い浴槽の中、後ろから抱えられ、うなじや背中に唇を這わされていた。
確かに…このままでは確実に逆上せてしまいそうだ。
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