彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~

月曜日の仕事を終えて帰宅するとすぐに宅配便が届いた。
送り主欄にはあのホテルの支配人の名前が。

不思議に思いながら開封すると、中身はクローゼットに置かれた沢山の衣類や化粧品だった。
中に入っていた手紙には、副社長に頼まれていたことが書かれていた。

あと、荷物の中には副社長の名刺入れも入っていた。
クローゼットの中に落ちていたという。

これがないと困るんじゃないのだろうか。
それに、こんなに沢山の衣類を貰うわけにはいかない。

副社長にメールをした。
気軽に電話ができる相手ではない。
いつ頃電話をしていいのかメールで聞いたのだがすぐに副社長から電話がきた。
「早希、珍しいね。キミから連絡なんて」

「副社長、今お時間よろしいですか?」

「ああ、会議が終わってひと息ついたところだから大丈夫だよ」

ああ、やっぱり忙しい人だ。それも金曜の夕方から日曜の夕方までずっと私が独占してしまったからだろう。

「あの、ホテルから宅配便が届いたんですけど」

「ああ、届いたんだ。どれも早希に似合うと思うから使ってくれると嬉しい。もらってくれるよね」

「副社長、あの、私こんなにいただけません」

「・・・やっぱり。早希はそう言うと思った。だから、ホテルから持ち帰らなかった。宅配便で届くようにしたんだ」
電話の向こうで副社長のため息が聞こえた。
でも、私は引くわけにはいかない。

「確かに、あの場で頂いてもお断りしましたけど、今でもそれは同じですよ。いただく理由がありませんから」

「早希は頑なだね。理由があればもらってくれるの?」

「理由があればですか?えっと」
確かに今自分で『理由がない』って言ってしまった。だから、反対に理由があればいいって事になってしまうのか?
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