彼女の居場所 ~there is no sign 影も形もない~
杉山さん、何がごめんねなんですか?
どういうことですか?と口を開こうとしたら……
「早希!」
ロビーに響く大きな声がした。
知ってる。
この声の持ち主を。
私の大好きな……副社長だ。
副社長はロビーの中ほどをこちらに向かってずんずんと早足で歩いてくる。
少し髪が伸びたみたい。
いや、そんなことより今は逃げなきゃ。
私はくるりと副社長に背中を向けて走り出そうとした。
「待て!早希」
いきなり現れた副社長の姿に動揺したのもいけなかった。副社長の長い脚の方が早くて、三歩ほどで副社長に腕を掴まれてしまった。
「捕まえた」
副社長はニコッとして、私を正面から抱きしめ……ない。何これ、何これ!!
副社長は私を抱き上げて荷物のように自分の肩にひょいっと担ぎ上げたのだ。
「高橋社長、今空いている部屋はありませんか?」
私を担いだまま、わが社の社長を振り返った。
「康史くん、社長室が空いているから使っていいよ」
と社長の朗らかな声がした。
「ありがとうございます。お借りします」
そう言って私を担いだままエレベーターホールに向かって歩き始めた。
「副社長!何をっ!下ろしてください!」
バタバタと暴れてみるけど、却ってしっかりと抱え直されてしまう。
「早希、ちょっとおとなしくしていて」
いや、いや、いや、おとなしくできるはずないですっ!
私のお尻が副社長の顔のすぐ横にあるだなんて耐えられない。
米俵のように担がれて、私は荷物じゃないんだから。
「副社長!下ろしてってば」
背中をバンバンと叩くけど、少しも体勢は変わらない。
「早希が逃げるから悪い」
「いやっ!重いし恥ずかしいからっ。副社長っ!下ろして!」
そう言って背中を叩いて抵抗しても副社長はしっかりと私を抱えてすたすたと歩いて行く。
「うわっ、すげー。康史さんのこと殴ってるよ。やっぱり谷口はすごいな」
聞き覚えのある声の方向を見ると、エントランスには社長や杉山さん以外にも結構な人数の社員や来客者がいた。
その中に、口を半開きにした高橋の姿と、満面の笑みで私たちを見送っている神田部長の姿が。
どういうことですか?と口を開こうとしたら……
「早希!」
ロビーに響く大きな声がした。
知ってる。
この声の持ち主を。
私の大好きな……副社長だ。
副社長はロビーの中ほどをこちらに向かってずんずんと早足で歩いてくる。
少し髪が伸びたみたい。
いや、そんなことより今は逃げなきゃ。
私はくるりと副社長に背中を向けて走り出そうとした。
「待て!早希」
いきなり現れた副社長の姿に動揺したのもいけなかった。副社長の長い脚の方が早くて、三歩ほどで副社長に腕を掴まれてしまった。
「捕まえた」
副社長はニコッとして、私を正面から抱きしめ……ない。何これ、何これ!!
副社長は私を抱き上げて荷物のように自分の肩にひょいっと担ぎ上げたのだ。
「高橋社長、今空いている部屋はありませんか?」
私を担いだまま、わが社の社長を振り返った。
「康史くん、社長室が空いているから使っていいよ」
と社長の朗らかな声がした。
「ありがとうございます。お借りします」
そう言って私を担いだままエレベーターホールに向かって歩き始めた。
「副社長!何をっ!下ろしてください!」
バタバタと暴れてみるけど、却ってしっかりと抱え直されてしまう。
「早希、ちょっとおとなしくしていて」
いや、いや、いや、おとなしくできるはずないですっ!
私のお尻が副社長の顔のすぐ横にあるだなんて耐えられない。
米俵のように担がれて、私は荷物じゃないんだから。
「副社長!下ろしてってば」
背中をバンバンと叩くけど、少しも体勢は変わらない。
「早希が逃げるから悪い」
「いやっ!重いし恥ずかしいからっ。副社長っ!下ろして!」
そう言って背中を叩いて抵抗しても副社長はしっかりと私を抱えてすたすたと歩いて行く。
「うわっ、すげー。康史さんのこと殴ってるよ。やっぱり谷口はすごいな」
聞き覚えのある声の方向を見ると、エントランスには社長や杉山さん以外にも結構な人数の社員や来客者がいた。
その中に、口を半開きにした高橋の姿と、満面の笑みで私たちを見送っている神田部長の姿が。