真実は目の前に
「なぁ華表」

柚紀さんと話していたと
思っていた理事長に呼ばれた。

『何ですか?』

「多分、
どうでもいいだろうけど
真一の怪我、全治五ヶ月だってさ」

それは御愁傷様。

あの時の侑君は
相当キレてたから
礼君とあたしが止めなきゃ
半殺しにしてただろうな(苦笑)

「騎羅、どういうことだ‼

誰にやられたんだ⁉」

復活したらしい担任が
理事長に詰め寄る。

「そのままの意味だ……」

やった犯人を知っているのは
あたし・礼君・泉・理事長。

そして当人である侑君本人。

『すみませんね。

彼をやったのは私ですよ(ニヤリ)』

ありゃりゃ、白状しちゃったよ(笑)

「なっ⁉

何でそこまでした⁉」

その理由は
理事長には言ったよな。

『姫を仲間を愛する人を
侮辱されて黙ってられる程
私は大人ではありませんのでね』

一旦、そこで言葉を切ると
侑君は私に言っていいかと
目配せで聞いてきた。

いいよと合図した。

『そもそもの原因は
そちらの現総長さん達が
茉緒さんを拉致ったことですよ。

しまいには茉緒さんを
犯したかったなんて言ったそうです(怒)』

キレかけているけど
理事長がいるから抑えている。

「幸歩と蓮陏は華表がやったんだよな」

あの日、理事長室で
そう報告したからね。

担任は理事長の言葉に
またもや驚いている。

『そうですよ(ニヤリ)

雨竜の皆のおかげで
強くなれましたよ』

喧嘩も精神的にもね。

『あの二人は
全治二ヶ月ってとこじゃないですか?』

あたしの質問に理事長が頷いた。

「あいつらは自業自得だな。

今後一切、華表に近付かせないから
天城も雨竜の奴らも安心してくれ。

すまなかった」

理事長が私達に謝った。

この謝罪に笑っていたのは
柚紀さんと瑠花さん。

驚いたのは担任。

『今回は
茉緒さんも無事でしたし
終わったことですから(苦笑)

あの時は
少々我を忘れていましたので
私も謝罪させていただきます』

侑君が理事長に謝罪した。

『陸十、すみませんが
四人にお茶を出してくださいますか?』

「今、用意してるから待ってて」

キッチンの方から陸十の声がした。

用意ができたらしく、
トレイにあたし達の分まで乗せて来た。

『私達の分まですみません』

「白状すると
侑さん達の分はついでだよ」

ぁはは、陸十も素直だな。

『母さん達も
こちらに座ってください。

陸十の作る物は
何でも美味しいんですよ』

四人に構わず、
クッキーに手を伸ばした侑君。

あたしも料理はできるけど
めんどくさがりだから
気が向いた時しかしない。

「先生方もどうぞ」

中々手をつけない
大人四人に陸十が勧めた。

「頂くとしよう」

理事長がスコーンを手に取った。

「美味いな」

一口かじって感想を述べた。

「ありがとうございます」

ペコリとお辞儀を
するところが礼儀正しい。

『母さん達も食べてみてください』

今度は侑君が柚紀さん達に勧める。

「あら本当に美味しいわ」

瑠花さんがニコニコしながら言った。

★━━━━━━━━━━━━━━★

『陸十、明日の昼食なのですが……』

侑君が突然、口を開いた。

「うん? 何かリクエスト?』

何か食べたい物でもあるのかな?

『えぇ(苦笑)

甘い卵焼き、入れてもらえますか?』

可愛らしいリクエストだな。

「いいよ*♬೨

侑さんがリクエストなんて珍しいね」

二人のやり取りが
気になったのか
柚紀さんがあたしに訊いてきた。

「彼は年下よね?」

端からみたら異様だろう。

三年生の侑君が敬語で
一年生の陸十がタメ語なんだから(笑)

『はい。

一年生で下っ端ですけど
学年関係なく
全員タメ語っていうのが
雨竜のルールなんですよ』

あたしの説明に大人四人は
目を見開いている。

『礼哉が堅苦しいのは嫌
と言って先代達のルールを破ったんです』

私の後を継ぐように侑君が言った。

★━━━━━━━━━━━━━━★

あの後、解散となり
担任は複雑そうな表情(かお)のまま
理事長の車で帰り、柚紀さんと
瑠花さんも帰って行った。

喧嘩を教えてもらうのは
また後日ということになった。
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