お見合い相手は、アノ声を知る人
握られた弱み
「まさか、こんな所で会うなんてな」


小早川さんはすっかり呆れ、私はそれ以上に深く落ち込んでた。


「……まあいい、とにかく一旦出ようか。此処では落ち着いて話す気にもならないし」


混んできた…と辺りに視線を配り、私は否応もなく、コクン…と首を項垂れた。

先を歩いて行く小早川さんの背中を見つめながら、どうして彼とお見合いすることになったんだろうと思っていた。




「……なあ、知ってるか?今日のお見合いは、あんたのじいさんからの申し出だって」


「えっ…」


「孫が三十近いのに嫁にも行かず、実家に舞い戻ってきた…と俺のジジイに泣きついてきたんだ」


「お、お祖父ちゃんが!?」


「孫思いだよな。おかげでこっちは出勤明けの休みもぶっ飛んだんだけど」


そう言いながら振り向いた人ときちんと顔を合わせることも出来ず、スミマセン…と小さい声で謝った。


まさか、お祖父ちゃんがそんな大それたお願いをしてるとは思わなかった。

前から孫思いで私にはかなり甘かったことは確かだけど。




「………アノ事、家族には内緒にしてるんだな」


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