お見合い相手は、アノ声を知る人
思い出してみたら、こうして誰かと旅行するなんて久し振りだ。



(……だからって、どうしてこの人と)


しかも、朝起きた時から馴れ馴れしく人のことを名前で呼ぶし、何の心境の変化よ…という感じ。



「明里」


ほらまた。


「何よ!?」


怒鳴るように振り返れば、ワゴンを通路に止めた車内販売のお姉さんが顔を引きつらせてる。


「あ…ごめんなさい…」


貴女に対して怒った訳じゃありませんから。


「おっかねーな。何買うかって聞いただけなのに」


すっかり楽しむつもりでいる彼に目を向け、呆れつつもこうなったらヤケクソ…と思いだした。


「取りあえずコーヒー一つ。それからアイスクリームも下さい!」


会計は勿論この人持ちで…と指差し、不貞腐れながらも足を組んだ。


「弁当は?」


「要りません!」


さっき食べたワッフルがまだ胃袋の中に残ってる。
あれでは物足りなかったらしい彼は、駅弁を一つ頼んでお茶も買った。



「ほら」


アイスとコーヒーを手渡されて受け取り、「腹減ったなー」と言いながら開けられる弁当の中身を見入る。


「おっ、豪華」


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