お見合い相手は、アノ声を知る人
「……月野…さん…」
「山根さん…」
ほぼ同時に声を掛け合い、身じろぎもせずに黙り込む。
スポーティーなポロシャツとハーフパンツ姿の彼を見たのは初めてで、それが何故かドキン…と胸を弾ませた。
「どうして此処に?」
「そう言う貴方は何故…」
目線の先にペーパーバッグを持ってる姿を見て、ひょっとして…と声を出した。
「病院へ向かう途中ですか?奥さんは如何ですか?」
あの夜から二ヶ月以上が経過してる。
体調の方はどうだろうか。
「ああ、だいぶ元気にはなったけどね……」
冴えない表情でそう呟き、私は胸が抉られた。
まだ精神的に弱ってるのかと思い、自分が浮かれてる場合じゃないんだと認識した。
「その人は?」
シュン…と肩を落とす私の後ろにいる人を見つけ、ハッとして顔を上げながら振り返った。
小早川さんは渋い表情で山根さんを睨んでる。
きゅっと胸が締まり、息を飲むように唇を噛んだ。
「この人は……」
何と説明をするべきか悩んでると、ポンと肩に手を置かれた。
「初めまして。月野明里の婚約者です」