お見合い相手は、アノ声を知る人
言葉よりも……
「入れよ」


部屋のドアを開け、私を先に入れようとする彼を見つめた。
此処は彼が今住んでる所で、あのマンションではなく、別の場所に移り住んでた。


「あの…」


駅で山根さんと会った後、本当は電車で送り帰される予定を変更して、駐車場へと連れて行かれた。

彼の車に乗り込むと中は蒸し風呂の様な暑さで、二人で慌ててウインドウを下げて風を追い逃がした。

その後、何処に行く?と聞かれたから、何処でもいい…と答えたらここに連れて来られてーーー。



「何だよ。今更怖気付いたのか?」


そう言って意地悪そうに笑う彼を見ながら、そうじゃないけど…と呟く。
私が引っ越してから少しして、彼もあそこを離れたんだと知って驚きを感じてた。


「てっきりまたホテルに戻るのかと思ったから意外で」


「そんなにホテルばかり行けるか。いくら会員だと言っても宿泊料金は高いんだぞ」


精々週一でバーに通うくらいだと言い、足の進まない私の背中を押してドアを閉めた。

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