お見合い相手は、アノ声を知る人
「早く持ってこいよ。その処理が終わらないと部署の連中に立替金が返せないんだから」


それでなくても毎日発生してるし、ボンヤリなんてしてられないんだと言いだした。



「あ…あのねー」


それなら毎日その日のうちに処理すれば良かったんじゃないの!?こんなに溜めなくてもさー、と言いたくなって口籠る。


この人にあれこれ反論してる場合じゃないんだ。
少しでも早く終わるなら手伝って貰う方が賢明。


「じゃあ…先週分を少しお願いしてもいいですか?」


「何でもいいから早く持ってこいよ。どうせ一時間もしたらまた出かけるんだから」


「えっ…」


「お寺に宿泊したいって顧客がいてさ、その為の宿泊場所を確保する」


「だったらいいですよ。その間休んでて下さい。この仕事は私のやるべき事だし…って、ひゃっ!」


急に立ち上がって、前髪をクシャリと掴まれたから驚いてしまった。
目を見開いたまま、前に立つ人の顔を見つめてしまう。


「な…何ですか。急に」


あー驚いた……そう呟こうとしたら向こうから先に声が戻った。


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