陸の漁り火
*陸の漁り火

 近所の廃屋で肝試しをしていた高校生たちが翌日、突然倒れて病院送りになったという話を聞いた。

 原因不明の熱病にうなされているそうだ。

 正直、俺は「またか」という気分だった。

 どうしてあんな場所に行きたがるのか理解できない。

 幽霊を信じているわけじゃないが、あんな気持ちの悪い場所に魅力なんかない。

 信じていないというのは、俺は幽霊をみたことも、奇妙な体験をしたこともないからだ。

 よって、俺には霊感はない。

 近所の廃屋は肝試しによく使われている。

 いつ頃から廃屋なのかは覚えていないが子どもの頃には、すでに誰も住んでいなかったと思う。

 こういう、本当にやばそうな場所にはテレビなんかこないものだ。

 俺にはなんの関係も無いと、まさに対岸の火事のごとくそれらの話を聞き流していた。

 ──はずだった。
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