ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。

「ああ!その話・・やっぱり本当だったんだ。優秀な奨学生だったし、なんかお嬢様っぽい感じだったから許嫁とか言われても、違和感はないな。」

新郎の金城は納得していた

「勿体無いんだよー。
許嫁なんて無視してさ、もっといい男を美桜なら絶対掴めるのに!」

爆弾を放り投げて、気づいてない梨夏をたしなめる美嘉は心配そうに私を見た。

黙ってシャンパングラスを空にした二条慧も、私をじっと見つめていた。

「まあ、そんな感じだから。
私のつまらない話はここでお仕舞い!!
許嫁がいるので、彼氏も必然的にいらない訳よ・・。
梨夏も最近別れたみたいだし、金城君紹介してあげてね?
あ、シャンパン切れたから頂いてくるね。」

踵を返して華やかな集団から抜け出た私は、シャンパンを取って、庭園を臨むバルコニーへと向かった。

オレンジ色のガーベラや、白薔薇などが一面に植えられて手入れも行き届いた庭園が眼下に広がっていた。

さわっとそよぐ風を受けて、その景色を眺めた。

「許嫁なんて馬鹿みたい・・。
自由に生きるためにここにいるのに。
結局、刷り込みから逃れられずに・・呪いのようにあいつが付きまとう。
全てを捨てたら楽になるのに・・。」


「ふーん意外だな。
馬鹿みたいだと言うなら他の男を選んでしまえばいいんじゃないか?」

嫌な予感がして、振り向いた先には二条慧が微笑んで立っていた。

私の側に近づいてきた。
身構えた私を見て笑った二条慧は、そっと私の耳元に近づいて囁いた。

「それなら、俺が君の婚約者になってあげてもいい。
君の親もきっとそれで文句はないだろう。」




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