ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。
「本当にそうですね・・。慧に会ってから、嵐のような半年でした。」

「二条のワンマンに常々振り回されていたからね、山科さんは・・。
困難を沢山乗り越えた分、これからの2人の未来はきっと明るい筈だよ!
離れてても応援してるから、頑張っておいで。」

「私も応援してるわ。またいつでも帰って来てね・・。」

寛貴と咲の言葉に、私は嬉しくて胸が一杯になった。

出会ってからの様々な事が思い出される。

「そうですね、私だけの力じゃ解決出来なかった事が沢山ありました。
周りで助けてくれたみんなのお陰なんです。
本当に有難うございました・・。」

「美桜ちゃんが頑張って運命に勝ったのよ。二条先生と、2人でね。」

慧が私の瞳を眩しそうに見つめて笑う。私は、この瞬間を胸に焼き付けていた。

空港までの道をひた走っていた筈の車が、急にウィンカーが出されて細い道へと走って行く。

気が付くと、高速道路に乗って成田まで向かう筈のルートから外れていた。

私は驚いて首を傾げた。

地下の駐車場に車が降りて、ゆっくりと停車する。

「さあ、行こうか?」

私は、何が何だか分からずにキョロキョロと周りの景色を見ていた。

「慧?空港に向かうんじゃないの?」

「行ってらっしゃい。
ここで私たちは待ってるねー。」

寛貴と咲はシートベルトをしたまま、手をヒラヒラさせていた。

私だけが慧に強引に手を引っ張られて降ろされる。

駐車場から、エレベーターに乗せられて不安で一杯になる。

開いたドアの先にはどこかの受付カウンターの前に出た。

ざわざわと人が行き交い、書類をてにした人や、手続きを待つ人がいた。

「ねえ・・。ここ区役所だよね?
空港に向かってたんじゃないの?」

恐る恐る問うと、落ちついた笑みで慧が振り返る。

「決まってるだろ?」

カサッと封筒から出された紙を私の目の前に広げる。

青ざめた私に、慧は得意気に微笑んだ。

「サイン済みの婚姻届け。約束通り、一緒に出しに来た。」

「あーーーっ!!いつの間に!!・・いつ気づいたの!?」

受付前で大声で叫ぶ私に、慧はしてやったりと目を眇めた。

「君がサインを書いてた時から気づいてた。
山科の報道が加速していく度に君を山科から、早く二条にしたくてね。
はい、旅券はそのまま使えるから大丈夫だよ。」

驚いて目をパチクリしている私の手を取る。

理解出来ずに数秒固まった私は、茫然自失の状態だった。

「何でいつも全てにおいて用意周到なのよ!
・・信じられない。」

私は瞠目して、眉を顰めながら慧を見上げた。
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