ご令嬢は天才外科医から全力で逃げたい。
ソファに座りながら不審すぎる私の動きを見て、何かを考えていた慧は私に質問をぶつけた。

「お腹は空いてる?さっき、イタリアンのケータリング頼んだけど食欲はある?」

「はい!お腹空きまくりです。ご飯嬉しいです。がっつり、ゆっくり食べましょう!!」

私が笑顔で頷くと、ぶはっと笑いだした慧に私はポカンとした顔で驚く。

「あのさ、緊張しすぎだよ。解りやすいなぁ、すぐにとって食いはしないから大丈夫だ。」

「そ、そうですよね・・。二条先生には存在自体が前科の塊なので信用や安心感が乏しくて・・。」

私の肩に腕を乗せて回した彼は、私の耳元でそっと囁く。

「心配しなくてもこれから毎日一緒なんだ。慣れてもらわなければ困る。」

私はぞくりと寒気を感じて、ソファから立ち上がって慧を睨んだ。

「あの・・やっぱり私をその・・抱くの?」

「逆に、両思いなのに抱きたくない男っている?」

「分かりません!私は男ではないので。」

「大丈夫だよ。人体の構造はよく把握している。必ず、君を満足させてみせるから。」

いちいち恥ずかしい言葉を吐く慧に、どう反論しても更に辱しめられるような気がした。

満足させるって・・海君が言ってた通り、軽くて遊び人なのかな・・。

少しだけ寂しくなって慧を見上げた。

「満足させる自信があるくらい、ご経験が豊富なんですか?」

私の言葉に唖然とした表情を浮かべた慧はポケットの携帯を出した。

「俺のLINE、メールも好きに見てくれていい。
君以外の女性は二条の母くらいだ。今までも、これからも君だけだ。」

「嘘・・!?だって二条先生は、尋常じゃない程モテるでしょう?」

「そんなの関係ない。ギフテッドって知ってるか?俺は、乳幼児期をアメリカで過ごした。そして14歳からアメリカに戻った俺は飛び級をして医学部に16の年で入った。IQ172だ。感覚も人の数倍敏感なんだ。」

「ギフテッドって、海外で英才教育を受ける飛び抜けた天才児の事ですよね。
変態だとは思ってましたが、やっぱり真正なんですね、納得です。」

「俺は、感覚も感性も過敏だから無理に好きでもない女を抱くのは苦痛でしかない。心と身体が繊細に繋がっているから脳が拒絶する。ちなみに変態ではなく、天才だ。」

天才も変態も紙一重・・。

その言葉が彼にはしっくり来るように感じる。

携帯電話から開かれたLINEのリストには、二条慶一と、二条奈津子と私と、守田寛貴しか入ってないことに驚いた。

「だから、美桜だけだ・・。俺が欲しいのは。」
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