そうして僕らはすれ違う【短編】
彼のことを、心から愛していた。



なんども、なんども夢に見るほど、愛していた。



今だって、出来ることなら彼の隣にいたい。



出来ることなら、彼に触れたい。



出来ることなら。



不可能であることをわかっていて、それでも願わずにはいられない。



いっそ、死んでしまおうかと思った。



けれど、それはあまりにも非効率的である、ということに気がついた。



もし、死んだとして。



本当に彼に会えるのか。



彼は本当に、そこにいるのか。



そもそも、死後の世界なんてあるのか。



彼の存在や記憶は、まだどこかにあるのか。
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