女トモダチ
映画が始まった。

以前3人で来たときに見たホラー映画とは真逆の感動ものの作品が大きなスクリーンに映し出される。

家族に愛されずに育った少女が孤独と絶望の淵から這い上がり幸せをつかむまでを描いた物語。

隣に座るセイラは序盤からボロボロと涙を流していた。

逆にあたしの目からは一滴たりとも涙なんて流れてはくれなかった。

ずっと考えていた。

あの時、ハルトと二人っきりで映画に行ったとしたらどうなっていたんだろうって。

セイラがあの時あたしのことを映画に誘ったりしなければ。

ハルトが3人で行こうと誘ったときに遠慮して断ってくれていれば。

そうすれば、きっと今ハルトと一緒に映画を見ているのはあたしだった。

たらればばかり考えていてもしかたがないと分かってる。

でも考えずにはいられない。

あたし、このまま黙ってハルトのことを諦めるの?

諦められるの?

自分自身に問いかける。

でもその答えは出ない。

気持ちが揺れる。

悶々とした気持ちを抱えたままスクリーンにはエンドロールが流れる。

それも終わりパッと明るくなった場内。

あたしはセイラを見て苦笑いを浮かべた。

「セイラ泣きすぎだって~!」

「だって……感動しちゃって……。一生懸命頑張ってて偉いなぁって思ったら涙が止まらなくて……。ごめん……ちょっと待っててね。タオル出すから……」


セイラが足元のバッグに手を伸ばすために腰を折った瞬間、ハルトと目が合った。

あたしがハルトを『嫌い』と言った日以来のことだった。

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