【BL】お荷物くんの奮闘記
「オレの体使っていいから。リュータと話してやってくれよ」


「……いいんだな? 今度こそ、返さねえかも、しれねーぞ」


 黙りこくっていた師匠が口を開いて、告げたのは自分を思いとどまらせようとする言葉だった。それはもとより承知のうえでの頼みだ。


「ああ」


 おもしろくねー弟子だな。彼が吐き捨てる。


「分かった。それ終わったら、……交代だ」


 手元のコアスクロールを指して、スペルスクロールの束の上に立っていた師匠がこちらに歩み寄ってきた。


 リュータがオレじゃなくて、「ユウ」を望んでも。もしそれで、返してもらえなくなっても、別にいい。


 オレが「ユウ」として、あいつを幸せにできるなら。


 本当はとっくに気付いていた。その感情に名前をつけて認めてしまうのが恐ろしくて、結論をここまで先延ばしにしてきて。結局すべてをリュータに委ねる自分は、やっぱり卑怯者なんだろう。
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