【BL】お荷物くんの奮闘記
「師匠さあ、補助系魔法って回復のほかに何かねえの、たとえば戦闘で死んだやつなら蘇生できる呪文とか」


「なくはねえな」


「それ教えてくれよ。オレが習得できるようになるまで見込みでどれくらいかかる?」


「いや、ありゃ魔力の消費が激しすぎる。今のおまえさんにゃ無理だな」


「使うには魔力値が足りないってことか」


「そういうことだ。一応教えてやってもいいが、魔力が適正値になるまで使うなよ」


 使えない、と言わず使うな、と表現した。発動自体はするということだろうか。


 中央都市にて宿を取り、久しぶりのベッドで眠りに就いたまでは良かった。あまりに夢見が悪く、眠気はあれど二度寝をする気になれなかった自分は、部屋に眠るリュータを残して宿の外に気分転換に出たのだ。


 夜の街を歩く者すら就寝している真夜中だったからか、腕輪からはすぐに師匠が顔を出してきた。眠れないから授業を頼むと冗談半分で持ちかけると、朝までみっちり教えてやると苦笑で返された。

師匠の実際の年齢は知らないが、外見だけで言うなら二十五、六のように見える。外見どおりの年齢だったとするなら、自分と師匠はリュータと自分ほどの年の差がある。夢見が悪かったなんて話はしていないが、年上にはやはり見抜かれてしまうものなのかもしれない。


「じゃあ一応ってことでいい、教えてくれ」


 思えば、夢の中で夢を見るという体験をしたのは初めてだ。痛覚がある夢、夢だと分かっている夢、味のする夢、どの感覚も脳が司っている以上、脳によって作られている夢に再現できない感覚など無い。

だからこのRPGのような妙な世界も、自分の夢の中の出来事だと思っている。目が覚めたら大学の一限にギリギリアウトな時間帯で、友人に代返しといてと連絡を取ってのんびり登校する。そんな朝がやってくる。
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