スーゼントの怨霊

悪魔の囁き

壁中に血を飛び散らし、意識を朦朧(もうろう)とさせている時、誰かが話しかけてきた。
「苦しいかぇ?痛いかぇ?」
かすれる目で声の方を眺めた。
「誰だ…」
壁の角で何かがうごめいている。
「苦しいかぇ?痛いかぇ?」
また壁の角から声がした。
「苦しくない。痛くない。」
そう答えると声の方向から何かが伸びてきた。
一瞬の出来事だった。
「あ゛あ゛ぁ…」
ハデスの胴体に何本もの黒びかる手が突き刺さり、声も出せないまま角をみつめる。
「これでお前の願いは叶う。」
謎の声を聞き終わると白い顔が大口を開けてハデスの顔を食べ始めた。
死んだはずなのに顔の皮がはがされるのを感じ、肉に歯が食い込むのが分かる。
胴体に刺さった何本もの手が一斉に指を動かし、血管や腱(けん)を切っていく。
痛みは感じず、気持ち悪い感触だけがハデスを襲う。
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