秘めるはずだった初恋
三月某日。私は高校を卒業した。


「あたしのこと忘れちゃいやだよ」
「電話するからね」
「一人暮らし始めるから、いつでも泊まりに来て!」


三年間仲良くしてくれたお友達との別れを惜しみながらも、私の目はあなたを探し続けていた。





「ねぇ、敏(さとし)くん、すっごい女の子に囲まれてる!」


泊まりに来てと言った晴子ちゃんが、大きな声を上げて指を指した。


玄関先にいる私たちは、晴子ちゃんの指を指した方向であるグラウンドの奥に、大勢の女の子に囲まれた敏くんを見つけた。


「ひゃあ、凄いね〜。流石学年一のモテ男くん」
「みんなボタンを狙ってるのかな……でも、この女の子の数だと全裸になっちゃうんじゃない?」
「うげぇ、晴子変なこと言うなー!」


晴子ちゃんともう一人のお友達の繭ちゃんの会話がすり抜けてしまうほど、私は彼をまっすぐ見つめた。


敏くんは三年前、高校入学と同時に大阪からこの陸の孤島と揶揄される田舎町にやって来た。


都会育ち故に垢抜けた風貌をした敏くんは、瞬く間に校内の人気者のなったのだ。
ルックスがいいだけでなく、分け隔てなく話し掛ける気さくな所や、周りを明るくさせる笑顔が魅力なんだ。


私も……初めて会った時から敏くんに恋をしていた。
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