職場恋愛
時刻は21時前。



鶏肉の照り焼きは何度やっても焦げて臭う。
何度か買い直したけどどれもダメ。

レシピ見ながらやったんだけどな。


フルーツもガタガタで汚いし。

上手くできたのはオニオンスープだけ。
スライスした玉ねぎとコンソメを鍋に入れただけだもん。
失敗するわけない。


こんなんじゃドン引きされるよね…。

鶏肉焼くだけでなんでこんなに焦げ臭いのって言われるよね。


最悪。


ガチャ


えっ。
今何時?
今日も通しだったはず。
早くない?


あれ、でも入ってこないな。
空耳?


「…航?」


手を洗って玄関に行くと航はやっぱり帰ってきていて。
だけど座り込んでいた。


「…おかえりなさい。あの、ご飯少し待ってて。もう少しでできそうなんだけど…」


本当はできそうもないけど。


「…航?」


応答がないから覗き込んでみたら。


え、寝てる?
座って寝てるの?

帰ってきてほんの数秒で眠りについたの?


え?



「…ただいま」


あ、起きてた。
目瞑ってただけね。


「おかえりなさい」


なんか、すごい疲れてる。

昨日の夜更かしが響いたのかも。
そりゃそうだけどさ。

どうしよう。鶏肉……。


こういう時はご飯が先?
寝るのが先?

どっち!?

私だったら……ご飯食べたいけど。
航は私ほど食い意地張ってないと思うし…。


「梅干しと納豆しかないけどご飯食べる?」


聞くのが1番早い。


「…ごめんね、ちょっと寝てからでもいいかな?」


…だよね。
当然ですわ。
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