My hero is only you
「2年ぶりだね、声を聞くの。久しぶり、元気だった?」

 まだ、名前も言っていないのに。

 でも、これがこの人らしさなんだ。

「名前を言う前に、よくわかりましたね」

「わかるよ。声もちゃんと覚えていたから」

「先輩って、あの頃からぜんぜん性格変わっていないですよね」

「どこが?」

「こういう何気ない優しさだけは」

「そうかなぁ」

「自分ではわからないだけですよ」

 あの頃とは違う、不思議な雰囲気で話をして、電話を切った。

 優しい声。

 優しい言葉。

 それはきっと誰にでも向けられているものなのだろう。

 あの時にそれに気づいていれば、過ごす日々はもっと違ったのだろうけれど。

 窓辺に立つと、外にはオレンジ色の夕焼けが広がっている。

「明日も、晴れるといいな」

 そう呟いて、机を振り返った。

 タイトルは決まった。

『My hero is only you』

 そう、この恋の物語の主役はあなたひとりだけ。

 いつか、どこかであなたに会える時には、誰が私の物語の主役になったいるんだろうか。


                                  -fin-

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