Black sweet Darling!《完》
「何だそのぶすっくれた顔は。俺客なんだけど?」

痛いところを突かれた。
いくら嫌な奴でも、お客様は平等なのだ。


「申し訳ありません。どうぞ、中へ。ご注文お伺い致しますね。」


頑張って貼り付けた笑顔は、きっと引きつっている。
こうやって顔に出やすいのも接客業としては致命的で。


見透かしたのか、男はくっくっと堪え切れない笑いをこぼす。


「…。」


昨日の偉そうな感じからは想像出来ない、少年のような表情に、不覚にも目を奪われた。


「何固まってんの?もしかして見惚れた?」


ぬっ、と目の前にそいつの顔が現れてハッとする。


「何バカな事おっしゃってるんですか!ご注文、どうなさいます?」


危ない。こんな奴のペースに飲まれてどうするんだ。

それにしても。
腹は立つけど、整った顔だな、

嫌味なくらい通った鼻と、切れ長の目はそこらの俳優よりも印象的で、こっちを見られると吸い込まれるんじゃないかとすら思えて来る。

マコちゃんが騒ぐのも納得。

だけどあたしのタイプではない。

上から目線で人の事を小馬鹿にしたように笑うこんな奴、一番嫌いな部類だ。
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