俺様Dr.に愛されすぎて



「藤谷さんはどうなんですか?」

「へ?」

「隠さないでくださいよー、真木先生との進展はあったんですか?そろそろ付き合うって話になりました?」



うふふと笑いながらひやかすように言う彼女に、私は『真木先生』の名前にギクリとする胸をおさえ、笑顔のまま隠し通す。



「な、なーんにもないよ。そういう話なんて、まったく」

「えー?そうなんですか?」

「もう営業担当も外れちゃったから、会う機会もないしね」



そんな私の答えに彼女はつまらなそうに口を尖らせると、部屋を後にした。



そう。あれから、私の担当先はほぼすべて、後輩の永野くんに引き継ぎをした。

本来ならふたりで営業先に回って引き継ぎをするべきだけれど、予想以上に私の方の仕事が立て込み、永野くんひとりに挨拶まわりにいってもらっている。



今日は、今頃当麻総合病院あたり回ってるかな……。



あれから連絡のひとつもとっていない真木先生のことを思い出すと、胸が痛い。

けど、もう話すこともない。

担当を外れて、仕事でも関わらなくなったしと、電話も拒否している。



真木先生は、今頃菜々さんと仲良く過ごしているのかな。

ニューヨークにも、行くのかな。



だって、真木先生からすれば出世のチャンスでもあるだろうし、断る理由もないよね。

それに、そばに菜々さんもいて……。



私への『好き』なんて、きっと錯覚。私の傾いた心も、きっと気のせい。

そう自分に言い聞かせて、私は手元の書類に目を通す。内容は、まったくといっていいほど頭に入ってこないけれど。




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