俺様Dr.に愛されすぎて





「俺さ、どんなときも藤谷の最後になりたいんだ」



短い雨が止んで、真木先生が車を停めたという駐車場まで歩いていく途中。彼は、私の手をつなぎながら言った。



「え?普通はじめてがいいんじゃないですか?」



デートもキスも、初めてにこだわる人はいても『最後』を口にする人は初めてだ。

そんな率直な感想をこぼすと、真木先生はふっと笑って私を見た。



「はじめてだとその後いろんな奴に上塗りされるだろ?だから、お前が『好き』って言うのも、キスをするのも、俺が最後だ」



そう誇らしげに言い切るのは、少し子供のような言い分。

だけど、確かに。それもいいかもしれない。

あなたにとっても、『好き』もキスも私が最後。



「じゃあ、私も。真木先生の最後にしてください」



笑って言った私に、彼も嬉しそうに笑う。

小さく笑ったふたりの頭上、雨上がりの夜空には、小さな星が輝いていた。





end.
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