あなたのことは絶対に好きになれない!
そう答えると、彼の手に少し力がこもり、撫でられるというよりグリグリと頭を回される。


「ちょ、痛い痛い。どうしたの急に」

「別に」

そう答えながら彼は私の頭から手を離し、目を合わさずにジョッキのビールの残りを飲み干す。


何か怒ってる?
…….もしかして、これは。



「妬いてる?」

そう聞くと、彼は目を合わさないまま、再び私の頭をグリグリと撫で回す。


「いーたーいーっ」

「うるせえよ」

な、なんて横暴な! この元いじめっ子が!


……でも『うるせえよ』とは言うけど、『妬いてる?』という質問に否定はしない……。


「……へへ」

「痛いとか言いながら笑うとか。ドMか」

「違います!」


……嫉妬されて嬉しかっただけだもん。


とは言えないけどさ。




「ところでその同窓会って、今度の土曜日だって言ったよな? 何時頃に終わる?」

ビールをもう一口飲みながら、オウスケくんに尋ねられる。


「二十二時くらいには終わるんじゃないかな」

「へぇ……」

「ん?」

オウスケくんはまたビールを口に含む。

何だ? この歯切れの悪い感じ。彼らしくない。


すると。



「……その日、深央が彼氏と旅行に行ってて留守なんだよ」

「え? うん」

「……泊まりに来ない?」


……その言葉の意味を理解するのに、数秒掛かってしまった。



「え、えと……?」

「嫌ならいいけど」

「い、嫌じゃない」

しまった。また彼の口車に乗せられてしまった。

でも、本当に嫌じゃないし……。
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