桐谷高校殺人投票
「悠……」


梨央が小さな声で呟いた。


悠が戻って来たのだ。


咄嗟に悠から視線を逸らすクラスメート。


小さく折りたたまれた投票用紙には、祐の名前が書かれているに違いない。


あたしはそっと自分の席に戻った。


「早く教室に入りなさい」


先生の言葉に悠が教室内へと足を踏み入れた。


それとほぼ同時にチャイムが鳴った。


生徒たちが次々に投票用紙を箱に入れて行く。


その間誰も会話をしなかった。


みんなの足音がやけに大きく聞こえて来るほど、教室内は静かだった。


みんなが投票を終えて、最後に悠が席を立った。


ギリギリに教室に戻ってきて、一体誰の名前を書いたんだろう。

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