甘々王子に懐かれた!?


なんでもいい。今はただ、あの間抜けヅラのバカ先輩に会いたい。




「先輩っ」




先輩の振り向く速さは異常なのに、セリカさんはもっと上だった。


そこにいたセリカさんは、以前あった時のセリカさんとは別人のように感じるほど怖い。




「ユウマちゃんじゃない、久しぶり」




この久しぶりは、友達がいう久しぶり、親戚がいう久しぶりとはまた別の類のものだ。


こんな恐ろしい久しぶりを私は初めて聞いた。




「お、お久しぶりです、セリカさん」




私は、勝手に意地の張り合いを始めて、セリカさんに震える声で挨拶する。


セリカさんはクスリと小さく笑みをこぼした。




「先輩、あの――――」




セリカさんの存在を無視して、先輩と話そうとすると、セリカさんの声によって遮られた。




「ユウマちゃん。あのね、はっくんに気安く話しかけないでもらえる?はっくんはね、今日、私の彼氏になったの。嬉しいわぁ」




〝私の彼氏になったの〟


セリカさんのその部分だけが頭の中で何度もリピートされる。


どういうこと?ねぇ、嘘だと言って。


きつい嘘?先輩、先輩。先輩……!


どうか、嘘だと――――。




「ね、はっくん」




嘘だと、




「……あぁ」




言ってよ――――。
< 93 / 143 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop