恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】


終始幸せいっぱいだった東屋さんとの旅行が終わって、それから数日後には夏季休暇に入り、私は社会人になって初めて実家に戻った。
毎日の通勤には少々遠いので社会人になって一人暮らしを始めたけれど、実はそれほど遠くない。


三月までは住んでたんだし、まだ数か月しか経ってない。
だから、二日くらい居てすぐに戻ろうと思ってたのに、お父さんが離してくれなくて結局一週間びっちり実家で過ごす羽目になってしまった。


そうして漸く休み明け、一日目。
示し合わせたように朝一番で出勤した、私と東屋さん。


給湯室で挽き立てのコーヒーをふたりで飲みながら、実家での数日のことを報告していた。


「お父さんに彼氏が出来たって言ったら、泣かれちゃいました」

「今まで言ったことなかったの?」

「初めてだったんです。今までは何か、言える感じでもなかったというか……」



言うまでもなく、別れてしまったりとか。
そう考えると、これまでの付き合いがやっぱり、自分の中でも相手の中でもそれほどの重みを持っていなかったのだと気付く。


こんな恋を知ってしまったら、もう以前みたいに「好きかもしれない」や、「これから好きになるかも」なんて、曖昧な気持ちで付き合うなんて信じられないほど軽率だと感じる。


ほんとの恋を知った、そのことがすごく嬉しかったし、誇らしかった。
だからつい、両親に話してしまったけれど、まだちょっと早かっただろうかと少し心配になる。


だけど東屋さんは、コーヒーを啜りながら穏やかに笑って言った。



「初めて話してくれたんだ? 光栄だけど、会いに行ったら殴られそうだな」

「お母さんは東屋さんの写メ見せたらきゃあきゃあ言ってましたよ。お父さんは見ようともしなかったけど……拗ねちゃって」

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