社内公認カップルの裏事情 〜ヲタクの恋は攻略不可能?〜

「何がおかしいのよ!余裕こいちゃって、本当ムカつくわ」

 スマートフォンを放り投げ、またコントローラーを両手に握りしめる。すると、スマートフォンから『そんなムカつくやつと明日会っちゃうけど、大丈夫? 会わないでおく手もあるけど』と笑いの混じった声が聞こえてきた。

 私は、彼の言葉ではっとした。そういえば明日、この電話越しの彼、まきろんと会う約束をしていた。そのことを今の今まですっかり忘れていたのだ。

『あ、忘れてたやつか』

「あはは」

 電話越しの彼は、私が約束をすっかり忘れていたことを見透かしていた。私は苦笑いを浮かべると、カレンダーに視線を移した。

 私と彼が出会ったのは、今私がプレイしている陣地取りゲームのようなもののオンライン対戦がキッカケだった。初めはよく対戦する相手だな、となんとなく思っていただけだったのだけれど、次第に仲良くなり、電話番号を交換するまでになった。

 通話をしながらオンラインでゲームをプレイする。それも、ほとんど毎日。偶然、会社の出勤時刻も退勤時刻も生活リズムが然程変わらないこともあり、私たちは平日も休日も予定が合えば一緒にゲームをプレイしていた。

 そこから約二ヶ月が経ち、ようやく明日、私はまきろんと会うことになった。

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